戸澤式レゾネーター
2009年 07月 26日
熱帯ギョブログも脱線に次ぐ、脱線(ひとえに私の所業にて)。今回は「戸澤式レゾネーター」なるものを書きます。よくもここまで・・・・。「思えば遠くへ来たもんだ」でございます。
「戸澤式レゾネーター」。商品を取り出すと、このようになっております。
ミミをつまんで少し膨らませ、角の口から空気を吹き込みますと、ご覧のようになります。
形は立方体のものもあれば、写真のような正四面体のものも、サイズはそれぞれに大、中、小といったところです。これをスピーカーの箱を満たすように入れます。写真の如し。
正式には「戸澤式吸音レゾネーター」。スピーカー箱の中で発生する「定在波」を吸い取ってしまうもの、であります。定在波とは、スピーカー箱の固有の音とでもいいましょうか。理屈は簡単です。箱には、表と裏、右側面と左側面、天と地など、平行した面が存在します。その平行面を半波長とする音波は、共鳴して大きくなります。つまり、平行面の距離の2倍波長の音、ある特定の音が、箱に住み着いているのです。
これはしごく当然の理屈。ゆえに、平行面を作らない箱の設計もあります。丸い球体にスピーカーユニットをマウントしたりします。ただ、これって大変な労力と工作精度が必要で、とても日曜大工の及ぶところではありません。そこで、平行の箱の内面に吸音材を張り巡らして、内部での音の反射を消そう。定在波から逃れようとします。
上の写真で黄色く見えるもの。それが従来からある吸音材・グラスウールです。吸音材にも幾つかの種類がありますが、考え方はみな同じ。音の振動エネルギーを細かい繊維に衝突させ、運動エネルギーから熱エネルギーに変換、消費させることによって、吸音または消音するものです。
戸澤式吸音レゾネーターは、紙風船のような感じの立体物を箱の中にいれることにより、定在波を紙の振動によって吸収、消そうというものです。雑誌などでも紹介されております。例えばこんな風に
フィッシャーディスカウの声が生々しくなった。その唇がしっとりと濡れていることが、明らかに聞き取れるようになった。・・・・・・、なんちゃって。
定在波があると、何か「こもった」ような音になるのは事実です。従来の吸音材でも、その量を、その貼り付け場所を、さまざまに試行し、ヒヤリングを繰り返して決めておりました。ただ、従来の吸音材では、定在波を完全には除去しきれないのも事実でした。
今回、戸澤式を使ってみようと思ったのは、私が私淑するアンプ製作者がありまして、その御仁がある雑誌で珍しくもスピーカー関連の製作記事を書いておりました。技術一点張りの、高等数学多用の、製作記事の中に「戸澤式を使った」ことが短く記され「効果は絶大でした」と、何の誇張もなく書いておられました。彼(安井章氏)が言うなら信じてみようと思った次第でした。それほど意外な方法。嘘を突かれたような気分です。戸澤式・・・ってのは。
「紙風船」を膨らませ、正四面体のような物体をそれぞれ3個ずつ箱の中に入れました。紙質は、ちょうと厚手の事務用封筒のような感じです。麗々しく「戸澤式・・・・・」とスタンプが押されております。いかに、安井先生の記事に書いてあったといえ、半信半疑。だって、「こんなもの」を詰め込んで、音が変わるなんて、どうにも納得できません。
結果は「驚きました」で、ございます。特に人の声のヌケが良くなったように聞こえました。
「安田祥子&由紀さおり」の賛美歌がいつもより、神々しく聞こえたのでありますよ。何か違う。何か、いい方向で、ちょっと違う。という感じでしたよ。シロウトのなまくらな聴力と違い、安井先生のような、それ自体が「測定器」のようなミミにしてみれば、「効果は絶大」も大げさではないのでしょう。
最後に正四面体の戸澤式を1つ、折り目を戻し、ただ一箇所の接着を外しましたら、下の写真でした。
何のことはない、厚めの事務用封筒を適当なサイズに切り、正四面体になるよう折り目を付けただけのものでした。「アイデア万歳」かようなものを発明した「戸澤」という人物に脱帽でございます。
by gyoblog
| 2009-07-26 22:39
| 師匠の部屋